M120号の画面に室内を描き、3人物を並置する構図をとる。画面左方には糸車を手に支える老年の女性、中央には両手で毛糸を編む壮年の女性、右手には画面奥に置かれた寝台に仰臥する稚児が描かれる。着座する左方と中央の女性の顔に光が射す様子は、朝日の差し込む窓辺が画面外の右手にあることを示唆していよう。
本作は東京美術学校(現・東京藝術大学)で日本画を修した路可が卒業後にヨーロッパに遊学し、アンデパンダン展・サロン・ドートンヌ展へ意欲的に出陳していた初期油彩画の系譜に連なっている。この度、画面クリーニング処置を行うに当たって額から外したところ、桟の外側の四辺側面に彩色が回り込んでいることが確認された。塗布の様子から絵具のはみ出しではなく作画の意識が及んでいることが看取され、この点から現在のM120号は換装後の状態であり、制作当初は若干サイズが大きいフランスのフレームにキャンバスが貼られていたことが推察される。(F)