1993年より90年代に集中的に制作された彫刻「DAISY」。そのシリーズからこの度確認された鉄による未発表作品3点を含む彫刻10点、また同時期のドローイング約200点を展示する。
1999年より2003年まで多摩美術大学に在職し、最後まで彫刻と対峙し続け、現在においてもその存在の大きさが失われることのない若林奮。2005年に開催された、多摩美術大学若林奮研究会企画による〈若林奮くるみの樹DRAWING1999-2003〉につづく第2回展。
「私は、私の作品の中で視覚的なことを強調し、触覚的なものをそれに従属させる様に試みた。私は、自分の姿勢を基本的なものに限定し、視線と彫刻の位置を同化させることによって、ある程度、漠然とした触覚的なものを変化させて見ようと考えた。それは漠然としたものが消え去ったのではなく漠然としたものそのものの存在がはっきりしたのである。私はものを見るうえで奥行きが付け加わったことを知る。それと同時に、あるひとつのものが他のものよりはっきりと区別されて見えることにもなる。私にとって遠方のものがよく見えるということは、決してめずらしいことではないと知っているが、遠方に視線が進む過程に複雑な要素や構造が加わって、そこには想像を含んだ資格への期待も持てると思う様になった。私は現在このことに関心を持っている。そこには、自分から最も遠い所の位置が想像のひとつになる。そこにあるものについて、又、その場所に自分の視覚がとどく過程についてしばらく考えてみようと思う。そこに表れる彫刻をDAISYと呼んでみようと考えている。」
1997年「Isamu Wakabayashi」展(マンハイム市立美術館・他)カタログ掲載テキストより抜粋
[同時開催]
竹尾ポスターコレクション ベストセレクション06 ポーランド・イラストレーションポスターの巨匠・2
付記 2022年12月25日 テキスト内の誤字を訂正
[関連イベント]
■講演会
「可憐さと不可視のもの-若林奮の連作《デイジー》をめぐって」
講師 水沢勉(神奈川県立近代美術館企画課長 / 横浜トリエンナーレ2008アーティスティック・ディレクター)
日程 12月1日(土)
時間 14:00-15:00
会場 多目的室
参加無料 当日受付