加山又造(1927-2004)は西陣の図案師を父として生まれ、幼少期より大勢の画工の間で美しく彩られる図案や文様を眺めながら絵を描き始めました。十代のはじめには既に画才を開花させていましたが、伝統に縛られる京都画壇で画家になる道を選ばず、敢えて東京美術学校(現在の東京藝術大学)に進学します。伝統の昇華を典範とする京都画壇の空気において日本画の系譜を強く意識する環境にあればこそ、その一方で希求したものは「新しい風」だったのでした。
伝統への意識と新しさを求める意志を作品に表現した加山又造の世界。制作は日本画のみならず、本職をも凌ぐと言われる銅版画に始まり、リトグラフや木版画については素晴らしい刷り師とのコラボレーションを見せました。また優れた工芸家との共作により陶磁器や着物への絵付、ジュエリーデザインなど多岐に渡る仕事を残しています。加山は屏風絵の制作を述べる際に「私は様式、装飾化して画面を造る楽しさにおぼれる」を冒頭としていますが、この日本画に向かう態度は、図案やデザイン分野にも通じており、制作のジャンルを超えて全ての作品が加山の手によるものであることを見事に主張しています。伝統と革新、二律背反の融合をすでに経験した作家は、全ての制作に普遍する明解なロジックを見抜き、独自の世界を切り開いていったのかもしれません。
伝統の継承と革新に挑み続けた日本画家、加山又造は2003年に文化勲章を受けた次年には不帰の人となりましたが、生涯を通じて挑み続けた美の探究は今も作品を通じて多くの人に語りかけてきます。
本展では、加山又造の制作を[装飾][版画][陶芸][絵画]に区分し、多角的にその魅力に迫ります。これまで公開されることの少なかった下絵やスケッチなどの資料と共に加山又造の知られざる世界を紹介します。
[関連イベント]
■ギャラリートーク
「加山又造のリトグラフを語る」
講師 木村希八(版画刷り師)
日程 9月28日(日)
時間 13:00-
「父-作家としての加山又造」
講師 加山哲也(加山又造長男・陶芸家)
加山英利子(画家)
日程 10月11日(土)
時間 14:00-