木口木版画という技法を駆使する小林敬生。その技法を用いて表されるのは現代文明の象徴たる高層建造物を背景とし草木や鳥獣、魚や虫が画面に重なり絡み合う超現実的空間。多摩美術大学で教鞭をとる小林の退職を記念する本展では、各時代の木口木版画の他、初期の板目木版などの未公開作品も展示し、作家の足跡を追ってゆきます。
本展は「木口木版画」の可能性に挑み、異例ともいえる大画面の表現を獲得した小林敬生の画業を総覧する初の展覧会であり、教鞭を執ってきた多摩美術大学の退職を記念して開催するものです。木口木版画とは、黄楊や椿のような極めて堅い樹木を輪切りにした(これを木口という)ものを版材とし、通常は銅版画に用いるビュランを以て刻み込むよう彫版する技法です。シャープな刻線が可能となるこの技法によって小林は鳥や魚、虫や動植物を細密に描きます。その織り成された生命賛歌の合間には文明の象徴たる都市景観が垣間見え、大自然に埋没する存在として表現されています。自然と文明が矛盾を孕みながら共存する画面空間はアンビバレントさ故に幻想性を誘っていますが、それはまさに小林が発する現代への警鐘であり、人類と自然の共生を願う小林のメッセージともいえるでしょう。本展では小林が確立した大画面と空間表現による木口木版画の代表的作品から、1960年代後半の画業初期に取り組んだ板目木版画を紹介します。これら板目木版画の多くはこの度初めて公開されるものも多く含まれ、これまでにない小林の歩みを知る機会となるでしょう。小林敬生が送るメッセージと共に、作家が追求してきた版画の絵画性をどうぞお楽しみ下さい。
小林敬生(こばやし・けいせい)
1944年 1月26日島根県松江市に生まれる。
1964-8年 (京都)インターナショナルデザイン研究所に於て上野伊三郎、リッチ・リックス夫妻に指導を受ける。
1988年 昭和62年度(第29回)優秀美術作品として文化庁買上げ(蘇生の刻-S62・8-)
1997年 多摩美術大学絵画学科版画専攻 教授
2006年 秋の褒章に於いて紫綬褒章を受章
2007年 第13回山口源大賞を受賞
2011年 (カタログ・レゾネ)小林敬生-木口木版画全作品1976~2011-、阿部出版より刊行
現在、多摩美術大学教授、日本版画協会理事、日本美術家連盟運営委員、版画学会会長
【主な個展】
1994年 幻視-小林敬生木口木版画展(東広島市立美術館/広島、志摩ミュージアム/三重)
2005年 滋賀の現代作家-小林敬生 木口木版画 1977~2004 (滋賀県立近代美術館/滋賀)
Kobayashi Keisei-wood-engraving 1978~2004
(グァナファト州立アロンディガナグラナディタス博物館/メキシコ)
2007年 Kobayashi Keisei-wood-engraving 1978~2005(ウ・ゼギル美術館/韓国、光州)
【主な展覧会・受賞】
1978-8年 第2回日本現代版画展/優秀賞
第9回版画グラン・プリ展/賞候補賞
第10回展 賞候補賞1席、12回展 賞候補賞2席
1982年 第2回ソウル空間国際版画ビエンナーレ展/グランプリ
1983年 東京セントラル美術館版画大賞展/佳作賞・買上賞
1989年 第3回和歌山版画ビエンナーレ展/優秀賞(1991年 第4回展 買上賞、1993年 第5回展 買上賞)
第19回現代日本美術展/ブリヂストン美術館賞
1990年 第1回高知国際版画トリエンナーレ展/佳作賞(1993年 第2回展 大賞)
第16回日仏現代美術展/優秀賞(第19回展 佳作賞・サロンナショナル-デ-ボザール賞9
1991年 大阪トリエンナーレ 1991-版画-/主催者特別賞(1997年-版画/銀賞)
2004年 第1回北京国際版画ビエンナーレ/銅賞
【主な収蔵】
リュブリアナ国際版画センター ニュージーランド国立美術館 大英博物館
ニューサウスウェ-ルズ美術館
東京国立近代美術館 国立国際美術館 町田市立国際版画美術館・他61館
■記念対談
「スモール イズ ビューティフル & シンプル イズ ベスト」
講師 中村敦夫氏(俳優・作家/日本ペンクラブ・環境問題委員会委員長)× 小林敬生
日程 10月26日(土)
時間 13:30ー15:30(開場13:00)
会場 多目的室
定員 100人
参加無料
■木口木版画ワークショップ
「-小林敬生 作品でコラージュしよう!!-木口木版画の摺りと裏打ち」
講師 小林敬生
日程 11月2日(土)
時間 13:30ー16:30(開場13:00)
会場 多目的室
定員 20名(申込順)
対象 高校生以上
参加費 1000円(材料費)
■小林敬生によるギャラリー・トーク
日程 11月9日(土)
時間 14:00-15:00
会場 展示室
参加無料
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